映画「君の名は。」は実に細かく世界設定されており、驚かされます。
もちろん多くの人間が製作に関わる映画なので設定が細かいのは当たり前なのですが、その設定により登場人物の性格や、時間経過、いまどちらが中に入っているかがわかりやすくなっています。
目次
趣味や性格
瀧の趣味
建築関係に興味があるらしく、部屋には関係書籍が大量にあるようです。
- 「BRIDGE DESIGN」という書籍など
- 何枚もの橋や建物のスケッチらしきもの
- カレンダーの絵も橋
- 「architecture(建築)」と書かれたポスター
- おそらく司や真太も同じ趣味らしく、カフェの木組みについて語っていたりします
よく書かれていますが、瀧くんの衣装にも意味が込められているようです。
- 高山探訪時の上着の肩部分に太極模様らしきもの
- シャツには「HALF MOON」の文字
その他、月は色んな場面で印象的に使われています。大きめの月が映るのは4回で、うち2回は有刺鉄線らしきものが十字に横切った構図ですが、旅館で月が映るシーンとカタワレ時では下弦の半月となっています。
また町長室には「陰と陽」と書かれたポスターも貼られています。
三葉の趣味
三葉は「ハリネズミ」がマイブームらしく、いろいろなところに登場しています。ただし四葉と異なり自分の私物はきちんと部屋に置かれています。
- スマホカバー
- スマホ壁紙
- スマホアプリの三葉アイコン
- ハリネズミのぬいぐるみ(枕元左側、くまのぬいぐるみの横)
- ハリネズミの置物(布団右側のチェストの上、ステレオの前)
- 筆箱にもハリネズミの模様
- 通学カバンにもハリネズミのストラップ
- 英語のノート表紙にもハットとステッキを身に着けたハリネズミ
- スカートを切られた奥寺先輩のスカートに施した刺繍にもハリネズミ
- 生き延びた世界での就職後、一人暮らしの三葉の部屋にもハリネズミの置物があります
ベッド脇、長い花瓶の横にハリネズミがいますね。宮守の自室にあったチェスト上の置物に似ています。
玄関横にあるチェストにもハリネズミの小物があります。
四葉の趣味
いっぽう四葉はまだ小学生のためか、TV周りに色々散らばっています。
- TV台に3DSっぽい携帯ゲーム機
- TV台に「ちゃお」っぽい漫画雑誌
- TVの近くに「JSスタイル」という小学生向け?ファッション雑誌
- 2つに止めている髪留めゴムにウサギ
- 何かの動物小物
映画のラスト間際にいろんな人物のその後が描かれますが、そこで登場する高校生になった四葉の筆箱が映ります。シリーズ物なんでしょうか。
複数回登場する場所
同じ場所を何度も登場させることで、時間の経過や変化を描き出しています。
歩道橋
歩道橋は何ヶ所か登場しますが、特徴的に出てくるのが信濃町駅前歩道橋ですね。
- 一度目:散々だった奥寺先輩とのデート後に瀧が電話をかけた場所 ※2016年10月3日(月)
- 二度目:デートの日に東京に出てきて瀧くんを探し回った三葉が電話をかける場所 ※2013年10月3日(木)
- 三度目:就職活動中の瀧が奥寺先輩と別れた場所 ※2021年10月4日
三葉の高校の机と椅子
- 一度目:さやちん「昨日は変やったよ?」、テッシー「エヴェレット解釈に基づくマルチバースに無意識が接続したっちゅう」などと話をしているシーン ※2013年9月3日(火)
- 二度目:(前日の美術の時間に机を蹴飛ばして黙らせたのを受けて)弁当を食べながら「なによーそれ」というシーン ※2013年9月13日(金)
- 三度目:彗星事故を知った(思い出した)瀧が校庭の端で立ち止まり呆然とするシーン
椅子が1つ飛ばされていますが、校庭全体が写っているシーンで確かめるとどうも同じ場所のようです。
”カフェ”
本物のカフェではなく、糸守町にあるバス停横の自動販売機がある広場。
- 一度目:9月13日の下校時にテッシーが誘うが三葉は帰ってしまうシーン。
- 二度目:2人の入れ替わりを連続的に描くシーン。ここでジャージを履いた三葉がノコギリで丸太を切り、テーブルと椅子を作っています。その後にさやちんを案内しているシーンも流れています。
なお瀧と同級生がカフェ巡りをしてるのは、建築関係に興味があるという設定のようです。始めの店でも「天井の木組みがいいねぇ」などと話しています。
四ツ谷駅(赤坂口)
奥寺先輩と瀧が2度待ち合わせに使っています。
- 一度目は三葉が取り付けたデートの日。この日は瀧がダッシュでなんとか間に合い先輩を待ちます
- 二度目は奥寺先輩に呼び出された就職活動中の瀧が行くと、奥寺先輩はスマホを触りながら待っていました
なお中身が三葉の時にもこの橋の上を、バイト帰りに奥寺先輩と2人で歩いています
クレーター湖
- ラストの御神体の外輪で出会うシーンではさらに象徴的に描かれています。
- 瀧が訪れた時~中身が三葉の状態では、背後のクレーター湖が2つありますが、中身が瀧の三葉が外輪に来た時にはクレーター湖が1つしかありません。これは彗星が落ちる前(2013年)と後(2016年)を象徴的に表しています。
- 同じ場所にいながら出会えない2人は、カタワレ時の訪れで相互に入れ替わり、邂逅を果たします。
- 映画では、互いの時間軸で手を伸ばした二人が一度はすれ違い三葉が手をおろしたあと、周囲の時間が流れる中、三葉だけが数秒間完全に停止します。その後わずかに風が吹いた時にはすでに入れ替わりが終わっており、瀧は2016年の瀧の体に、そして三葉は2013年の三葉の体へと戻って意識が戻っています。
- この瞬間、背後のクレーター湖は1つです。口噛み酒を呑んだこと+カタワレ時により、瀧の体が2013年へとトリップしたことがわかりやすく描かれています。
- そして瀧は「忘れないように名前を書いとこうぜ」といって三葉にペンを渡しますが、三葉が書こうとした瞬間カタワレ時は終了し、瀧の体は2016年へと戻ってしまいます。背後のクレーター湖も2つになっています。
- 瀧が「名前はー」と叫ぶと画面は三葉へと映りますが、これは彗星落着前の2013年です。
町長執務室
三葉のお父さんである町長の執務室。三葉は劇中で2回訪れます。
- 最初に登場するのは瀧が入っている三葉。このときは「お前は誰だ?」と問われてしまいます
- 2度めは瀧と邂逅した後の三葉本人(髪に組紐を結んでいる)が説得に訪れます。この時、室内には祖母一葉と妹の四葉もいます
三葉と瀧の入れ替わりを強調するシーン
組紐を作るシーン
- 三葉は慣れた手つきで淡々とこなします
- 瀧は「組紐とかこれ無理だろ~」と泣き言を言っています
繭五郎の話
- 一度目に四葉は「えっ!名前ついとるの?繭五郎さんかわいそう…」と驚いています
- その後中身が瀧に代わり御神体へと訪れるシーンでは、「誰だっけ?」と聞く三葉に対して、四葉が「(繭五郎は)有名やよ?」と逆に教えています。
バスケ
- 糸守の高校では授業としてバスケシーンが登場し、ノーブラの三葉(中身は瀧)に男子の視線が集まってしまいます。
- 瀧の通う都立神宮高校では屋上で遊びとして登場。この2人組は、中身三葉の時と中身瀧でバイトに行く時との両方に登場しており、昼休みにいつもバスケをしているようです。
※左上隅が瀧と友人2人
影の位置まで同じなので一見同じシーンに見えますが、1枚目では瀧の中身は三葉のため行儀よく正座しておりカバンもきちんとおいています、二枚目では中身が瀧なので座り方も違っています。その他の登場人物も同じですが、微妙に位置が変わってますね。
避難にかかった時間
彗星が落着した時刻は20時42分とはっきりと出ています。ただし彗星が割れ始めた時刻についてははっきりとでていません。
割れ始めたあと、さやちんやテッシーが周囲を改めて説得している映像が映りますし、割れなければ町長も避難訓練指示もできなかったのです。では割れ始めた時刻は一体いつなのでしょうか。
- 変電所爆破で電気が消えたあと、祭りに来ていた少年が見上げた時にはまだ割れていません
- その直後にサイレンが鳴りさやちんの放送が始まります
- 町長が町役場からの放送じゃないことを確認したときの時刻「18時45分」
- 瀧の名前を忘れたという三葉をテッシーが励まし、町役場に走らせた直後に近くの山に何かが衝突して火煙が上がります
- 再び町役場が映ると時計の針は「19時14分」ごろを指しています
- その後さやちんの放送に先生が割り込んで放送がストップさせられますが、この時にもまだ割れていません
- その後テッシーに戻り、勅使河原建設社長である父から「克彦!お前何しとるんや」と咎められてしまいますが、この時空を見上げると彗星が割れていきます
- その後、何ヶ所かからの映像が流れ、TVの中継映像も流れます
- カップルの部屋では19時49分、4人家族の部屋では19時20分。TVで中継ニュースが入るくらいなので、彗星が割れた時刻は19時15分~20分までのかなり早い間だったと思われます。
- そこから三葉が町役場に走るシーンが描かれ、決意した表情で父と向かい合うと、画面は彗星へと移ってしまい、まさに宮水神社の脇にある宮水家の居間の手前へと落着します。これが20時42分ですから、三葉が走る時間を考慮しても、およそ1時間程度の時間しか残されていなかったことになります。すでに日は落ちて変電所が破壊されたために一帯は暗闇になっており、直前にはテッシーらによる偽の避難放送が流れていたことを考えれば、町長は相当大急ぎで避難を促したのではないでしょうか。
- 町が大ダメージを受けるシーンが描かれその後に2016年の瀧が目を覚ますと、舞台は数年後の世界へとスキップしてしまいます。
まとめ
他にも、救う前と後では彗星事故を知らせる報道内容が異なっており、前者では死者多数、後者では(臨時避難訓練のおかげで)死者はほとんどいません。
なお三葉の父である町長は、町役場の位置からかどちらの世界でも生き延びています。しかも救う前の世界では町長選挙の対立候補が行方不明になっており、町長選は無期延期という新聞記事になっています。さすがに二葉と出会う運命の持ち主だけあって、強運の持ち主ですね。
瀧は御神体で口噛み酒を呑んで転倒してしまいますが、その際に壁にいつの時代に描かれたのかわからない彗星の絵を見つけます。そこでも彗星は、2013年の彗星とまったく同じように2つに分かれています。その後彗星の破片はこの御神体の場所へと落着し、そこが御神体へと変化したことを伺わせます。
避難計画を練っている時、テッシーは糸守湖が1200年前の彗星の衝突でできたクレーター跡にうまれたことを興奮気味に語っていますが、このテッシーは雑誌「ムー」にもハマっており、映画冒頭では「エヴェレット解釈に基づくマルチバースに無意識が接続したっちゅう」などと、完全に「君の名は。」のネタバラシとなってしまうセリフを喋っています。
タイムリープものなので、こうして同じ場所を何度も描いてみせることで時間の経過を見ている人にわかりやすく感じさせるのは当然ですが、繰り返しになりがちなシーンをメリハリをつけながらうまくつなぎ合わせることで、非常に効果的に使っていると感じさせますね。
こうして細かく見ていくと、何ヶ所かあれっ?っと疑問に感じる箇所や矛盾しているのではないかと思うところがありますが、とてもよく出来た素晴らしい作品だと思います。
あなたはいくつ気づきましたか?
また抜けている物があれば教えてください。