フジの月9とTBS日曜劇場の視聴率の差が話題になっています。
フジ月9とTBS陸王、明暗分かれた年の瀬社内風景 (日刊スポーツ) – Yahoo!ニュース
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171227-00087162-nksports-ent
- TBS日曜劇場「陸王」最終回視聴率が20.5%
- フジ月9「民衆の敵」最終回視聴率が4.6%
圧倒的な差がつきすぎて、少しばかりフジテレビが気の毒に感じるほどです。
記事では「宣伝関係者」が要因として、次のようなものを上げていますが
- (最終回日の)7時台の『オールジャパンメダリスト・オン・アイス』が羽生結弦選手不在で数字が伸びない(5・3%)まま月9になってしまった
- そもそも衆院選の影響で初回が1週出遅れたことが最後まで響いた ※衆議院選挙に影響を与える可能性があるという配慮
どちらも言い訳に過ぎません。
前の枠の視聴率が影響するなんて考えてるのはTV局だけで、今やほとんどの人が録画機能付きテレビで番組表を見て予約を入れて録画再生で見ています。だらだらTVをつけっぱなしで、なおかつ毎週逃すことなくお気に入りの番組を見ている昭和以前の視聴スタイルな家庭など少ないのではないでしょうか。
そもそもバブル期までに流行った「月9」という枠自体が、ドラマ好きな40代女性にしか理解できない時間帯となっており、その枠に「政治」を意識した内容をぶち込むとか正気の沙汰とは思えません。自殺行為と言ってもいいでしょう。
私はほとんどの回を見ていましたが、ドラマの内容自体はさすがに有名所の役者をそろえているだけあってなかなか良かったんじゃないかと思いました。ただし、肝心の脚本がお粗末で、「真の民衆の敵は(政治に無関心な)アナタ自身である」とかいうナンダソリャ的な結末でがっくりしました。
おまけに、最終回では高橋一生も篠原涼子も国会を目指すとかいう謎展開で、その直前に(市民を議会に集めて直接議論するという)直接民主主義理想論をぶち上げておきながら、最後はその市政を放り出して国会に進出とか矛盾しまくりもいいところで、まさに今のフジテレビを象徴するようなラストでした。複雑かつ高度に発展した現代社会を直接民主主義で動かせれば誰も苦労しないわけで、それをなんとか継続性を持たせてやりくりしているのが現在の民主主義国家なわけです。
そもそも石田ゆり子が篠原涼子と私生活面ですらべったり(篠原が家に帰ると石田が居て両家の子供がじゃれてる)な御用記者丸出しな演出なのも驚きでした。あれがフジテレビの理想とするジャーナリズムなんでしょうか。
一方の「陸王」は、クサイクサイと思いながらも伝統的かつ過剰なドラマ演出技法をこれでもかと詰め込み、毎回毎回少しの成功と大きなプレッシャーを掛けつつ最終回まで引っ張る脚本と演出が見事としか言いようがありませんでした。決していい脚本じゃないと思いますが、今の時代にあった内容と演出方法なんでしょう。
冷静に見れば、社長自身とか、社長の息子とか、怒鳴りまくってた陸上部監督とか、主要登場人物の思想と行動が同じ回でもブレまくりで見れたものじゃなかったのですが、それを演出で押し切った感じでしょうか。ゲンさんなんか何のために会社にいるのかすら疑問ですが、この作者の銀行担当者・経理担当者は毎回こうなので諦めてます。
ブレてなかった主要登場人物は、あけみちゃんとシューフィッターと怪しいシルクレイ社長くらいなものじゃないでしょうか。一番ブレてなく、陸王成功の最大の功労者は光石研さんの演じたアリムラスポーツ店長でしょうが、最終回ではほとんど映りもしませんでしたね。
このブレるブレないはもしかしたら原作そのままなのかも知れませんが、私はあの人の原作にまったく興味が持てないので読んでません。100%ドラマ視聴のみの感想です。あと渡辺系ゴリ押しで劇中歌を担当したリトルグリーモンスターもイマイチ盛り上がりに欠けたようです。
結局TBSもフジも報道(ワイドショーニュース)ではかなり偏っているものの、ドラマに関してはきっちりと割り切って経済状況や政治的要素をネガティブに取り上げることなく成功させることができるTBSと、ドラマでもネガティブキャンペーンをやってしまったフジテレビの差が出たというべきでしょう。しかも民衆の敵では、結局何を訴えたかったのかすらわからない曖昧なラストにしてしまったので、所期の目的すら達成できなかったように思います。最初からあのラストを狙っていたとすれば、そもそもテーマ選択をミスっているとしか思えません。
フジテレビはすでにバラエティでも大苦戦しており、看板枠の月9でも、次クールが芳根京子主演の「海月姫」(漫画原作)、その次は長澤まさみと東出昌大の「コンフィデンスマンJP」と、いわゆる棒演技のゴリ押し役者主演で外すのが確定しています。
TBS日曜劇場が、若い役者主演クールが比較的低調でむしろ年配役者主演クールで成功しているのを見ていると、フジのやり方はいかにも古臭くて目を覆いたくなるレベルですが、もはや方針転換も難しいのでしょう。