「退職代行サービス」なるものが注目されているようです。
会社からの非常口 用意します|NHK NEWS WEB
https://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/2018_0926.html
「退職代行サービス」とは
要するに、何らかの理由により自分では退職手続きが行えない人に退職手続きの代行を行う会社ということです。
この「自分では退職手続きが行えない人」にはもちろん様々な理由があり、その最たるものが日本の会社に特有な「絶対に辞めさせないぞ」という姿勢にあります。
会社を辞めたいと思っても有形無形の様々な圧力を受け、気弱な人の場合そのまま我慢し続けることが非常に多く、中には自殺という一番最悪の選択肢を選んでしまう方も多くいるようです。
そういう人々にとっては、ここで紹介されている「退職代行サービス」は、まさに救世主に見えることでしょう。
労働者を守ってくれる法律
日本には労働関係で労働基準法・労働組合法・労働関係調整法という主な法律があり、労働三法などと呼ばれています。このうち、労働者個人を守ってくれるのは労働基準法です。
いわゆる残業(時間外労働)の量であったり、有給休暇であったり、退職の手続きであったりというまさに多くの方が悩まされるようなことの多くは、労働基準法に明記されています。
とはいえ会社の現場では、この労働基準法をないがしろにするような社長・上司・同僚がたくさんおり、そういった人々と顧客との板挟みになって悩む人は数知れないのではないかと思います。
しかし実際には労働者は会社と対等の立場であり、こと退職に関しては、完全に労働者側に権利が委ねられています。
さらに、いくら会社側が就業規則等で労働者に不利益なルールを定めていようが、法律はそれより優先されるため、労働基準法に則って手続きを行うことにより、会社が定めるルールに従うことなく退職手続きを行うことが出来ます。
私は法律の専門家ではありませんので、具体的なアドバイスを行うことは出来ませんが、一般論として、次のようになっています。
- 期間の定めのない契約の場合:2週間前までに退職の意志を示すことで、退職可能。
- 有期契約の場合:
- やむを得ない理由がある場合:すぐに退職可能
- 契約期間1年経過後:自由に退職可能
期間の定めのない契約の場合
新入社員として会社に入社した多くの会社員の方は、このうち1に該当していると思われます。これらの方の場合、入社時に辞令を受け取り後は一定期間ごとに雇用契約の延長をすることなく、無期限に雇用契約が続きます。
この場合、労働基準法に従い、2週間前までに退職届などで退職の意志を示すことにより、退職が可能となります。
有期契約の場合
一定期間(3ヶ月・6ヶ月・1年など)ごとに、上司などと雇用契約を延長する形で労務契約を行っている方の場合、こちらは主に民法628条が影響してきます。
この「やむを得ない事由」とは裁判で判断基準が示されており、妊娠・出産・育児、家族の介護などが例として挙げられています。
逆にそうではないと認められる場合には、会社側から損害賠償請求を行われる可能性があります。実際には、この有期契約の場合でも、「XX日前に申し出ることで契約解除(つまり退職)できる」と書かれていることが一般的です。
労働契約の重要性
ここまで読んでおわかりになったかと思いますが、自分がいずれの契約形態であるかを認識すると共に、その労務契約書をじっくり読むことの重要性を認識されたかと思います。
大抵の場合、「形式的なものだから」、「前と一緒だから」などと、目を通す時間さえ与えずに、「すぐに」「その場で」印鑑を押すことをやんわりと強要されがちなのです。しかし、ものすごく重要な契約書なので、1行1行、1文字ずつ丁寧に読んでいき、疑問点があればその場で確認するようにしましょう。もし「時間がないから早めに」などと促された場合には、「自宅で確認して、明日お持ちします」といえばいいだけです。
とにかく大事なことは納得できない文言があれば印鑑を押してはいけないということです。その場で聞けない雰囲気であれば、一度持ち帰り、インターネットなどで調べるようにしましょう。多くの会社では違法な労務契約書を締結することはないだろうと思いますが、極稀に、違法で一方的に会社側に有利な労務契約書のフォーマットを使用している可能性もあります。
難しいことはわからない
そういう人を救ってくれるのがこの「退職代行サービス」なのです。
中には弁護士が処理してくれる会社もあり、未払いの残業代の請求や、もしパワハラがあった場合には慰謝料を請求してくれるようです。
もちろん、今の会社を辞めたら家賃も払えなくなってしまい立ち行かなくなるなどという追い込まれた方もいるかも知れません。しかしそれでも例えば生活保護を受給するなど、あなたに働く気さえあれば、なんとかなるものだと思います。
一番ダメなことは、どうしても会社と合わない場合に、我慢し続けることではないかと思います。
奴隷的雇用契約と日本経済
この、辞めたくても辞めさせない、一度辞めると転職に不利になる、という奴隷的な労働環境が、日本では未だにまかり通っています。それどころか、大半の会社がこういう雰囲気を大なり小なり持っているのではないかと思います。
本当にひどい話だと思います。
本来、会社と労働者は対等であるべきで、そうあればこそ自由で活発な組織になると思うのですが、残念ながら日本では一部のIT系ベンチャー企業などを除いて決してそうではなく、会社や上司からの有形無形の嫌がらせを受けながら我慢して働く状況が蔓延しているようです。
そんな状況では、高度な生産性であったり、豊かな人生であったりと言ったものが到底生まれるわけがないと思うのですが、日本の場合大企業が率先して労働者を奴隷化することに熱心ですので、そこから仕事を貰う立場の中小企業ではさらにそれを下回る労働環境になることは目に見えています。
これを変えるためには、私たち労働者ひとりひとりが声を上げていくしか無いのではないかと思われます。