前から指摘されていることでもありますが、今回の統一地方選挙でも国政と地方政治との乖離を感じました。
知事選+市長選のダブル選挙となった大阪の場合は、自民から別れた大阪維新の会の推し進める「都構想」という特殊性がありながらも、結局それは地方自治の問題が最大の焦点であって、今後、同規模の政令指定都市に波及していく可能性が高いのではないかと思われます。
また島根県知事選では、自民党の島根県連(自民党島根県支部連合会)と国政自民党の推薦が分裂してしまい、結果的に竹下(登首相の弟の亘氏)・青木という一時代を築いた国会議員団の意思は無残に打ち砕かれてしまいました。
同様に福岡知事選でも、現職候補とその面倒を見てきた(と自認している)麻生氏との確執が大きく取り上げられ、ゴリ押しで党本部の推薦は新人候補へと割り当てられました。しかしこれも結果は無残にも現職勝利となっています。福岡の場合、選挙前に発覚した麻生氏側近の忖度失言問題の影響も指摘されていますが、もともと負け戦であったものに拍車をかけただけであって、どっちにしろ麻生氏のゴリ押しには無理があったというのは各所で指摘されています。
これらの現象をマスコミでは相変わらず「安倍独裁政権の慢心」など批判しているようですが、ことはそう簡単なものではないようです。
福岡については自民党幹事長の二階氏が現職候補の応援に駆けつけており、新人を推した麻生氏とは対立構造となっています。
また大阪については、もともと大阪自民府議であった松井一郎氏や浅田均氏が、弁護士として名を売っていた橋下氏を擁立して始めた地域政党であり、その意味では大阪自民内部の抗争が続いていると見てもいいわけです。現に安倍総理および菅官房長官(および小泉氏)は、これほど注目された選挙でありながら、一度も大阪に応援に入ることはありませんでした。
島根についてはもう少しひどい状況で、”中央政党が地域支部団体の選挙に介入する”という今までの構図が明確にわかりやすく打ち砕かれた事例でしょう。「地域のことは地域で決める」という旨の言葉が県連幹部からはっきりと出ている点は、まさに中央と地方の対立そのものです。
今回の選挙で一番目立ったのが北海道知事選で、夕張市で実績を上げた若い候補が野党連合の擁立した石川氏を破った構図ですが、応援に行ったはずの野党党首たちが、口を開けば「アベ政治を許さない」などとのたまっていたのが衝撃でした。先の地震で北海道は大きく傷つきました。またJR北海道に代表されるように地域インフラ網を今後どのように維持していくかが大きな課題として浮き彫りになっているところに、中央政治の課題を突きつけても反応が薄いのは当たり前と言えます。むしろ財政再建団体に陥った夕張で、粉骨砕身してきた若手に北海道を託したいという気持ちはとても理解できます。
これらの現象は「国政と地方政治との乖離」であると見ることができると思いますが、この現象は今に始まったものでもなく、前回の小池氏の東京都知事選挙でも同様のねじれがあったことは記憶にあたらしいところです。
当時自民都連と小池氏との確執は連日報じられましたし、苦虫を噛み潰したような都連幹部と、安倍総理ともにこやかに会談する小池氏の対比は誰の眼にも明らかでした。その後小池氏は欲が出たのか希望の党を立ち上げて国政選挙へと打って出ますが、欲望に駆られた国会議員の野合はもろくも崩れ去ってしまいました。
マスコミは、今回も判で押したように安倍総理(と国政自民党)の敗戦であると印象づけたいようですが、上で見てきたようにそんな単純な構造ではなく、自民党内部での派閥争いに加えて、国政と地方政治との乖離が徐々に大きくかつ明瞭になり始めている状況ではないかと思われます。
総人口減少に伴って、地方自治はこれから長い苦境に立たされることが徐々に明らかになってきています。とくに北海道や四国、九州などにおいては真っ先にこの問題と直面することになるだろうと思われます。
しかしこの問題は単に地方の問題ではなく、こうして疲弊・弱体化した地方インフラは、地域セキュリティ面や国防面などにおいて日本という国の弱体化につながることは明確です。
そうなる前に地方自治のあり方を見直しをすべきところでしょうが、恐らくそれに対して前もって取り組もうという政党などないでしょう。副首都構想や道州制など長年議論されていますが、まったく前に進んでいないのが現状です。それに対する抵抗がこうした選挙で同時並行的に表面化してきているのではないかと考えます。