新刊書をゲラ刷り段階で読める「NetGalley」を試してみました。
やじうまWatch曰く、
「NetGalley」は、紙書籍の新刊をゲラ、つまり試し刷りの段階でいち早く公開し、書店員や図書館員、メディア関係者やブロガーに読んでもらい、口コミによる販促につなげようという仕組み
ということです。
どういうものかわからないため、実際に試してみました。
読むまでの手順概要
※PCで読む場合
- NetGalleyへの登録(氏名・生年月日・メアドなど)
- Adobe IDの取得とAdobe Digital Editionsのインストール
- 書籍レビューのリクエスト
- 承認待ち
- 「.acsm」ファイルのダウンロードとAdobe Digital Editionsへの登録
- 書籍データダウンロード
ざっとこのような手順となっています。
順番に見ていきましょう。
NetGalleyへの登録
とくべつ妙なものはありません。
「レビュワー」として氏名、生年月日、メールアドレスなどを登録します。
なお、なんでも好きなものが読めるのではなく、あらかじめこちらの趣味嗜好(読書ジャンル)を登録しておく必要があります。
登録内容やこれまでのレビュー内容により判断され、出版社からレビュー依頼(オススメ)が来る場合と、こちらから読みたい本にレビュー要求を出すことができます。
Adobe Digital Editions
PCで読む場合には「Adobe Digital Editions」が必須で、同時にAdobe IDを取得する必要もあります。
いずれも無料です。
なおAdobe IDは一般的なもので、上記NetGalleyへの登録情報と何らつながりはありません。
スマホなどでも見ることができます。
- Androidの場合:Adobe Digital Editionsのスマホ版利用
- iOSの場合:Bluefire Readerアプリ
いずれもAdobe IDが必要となるようです。
書籍レビューのリクエスト
登録直後は「本棚」に何もありませんので、「作品を探す」メニューから新刊書として紹介されているものから気になったものに”リクエスト”を送ってみました。このリクエストが通ればゲラ刷りが読めるということになります。
なお、「リクエストの多い作品」の方は、すでに”リクエスト”受付が終了していることがありますが、その場合でも”Wish”を送って承認待ちをすることができるようです。これは作品に興味が有ることを出版社に伝える機能で、出版社によっては、無作為に選んだ会員にダウンロードを認める場合もあるようです。
承認後
リクエストが承認されると、登録メールアドレスに「あなたのリクエストは出版社によって承認されました。」という内容のメールが届きます。
そこで「NetGalley」にログインして作品をダウンロードします。
.acsmファイルのダウンロードが終わったら、Adobe Digital Editionsへの登録を行います。
ダウンロードしたフォルダからAdobe Digital Editionsにドラッグ&ドロップすると、自動的に登録が開始され、同時に利用PCの登録(Adobe IDの確認)も行われます。※要するに著作権管理のために、閲覧PCを登録するということです。
少しの時間ダウンロードにかかりますが、終了すると通常のビューワーと同様、内容を読むことが可能となります。
気になった点
ビューワーが使いづらい
私が利用したのは「Adobe Digital Editions」Windows版3.0です。
電子ブックが流通し、各種ビューワーの機能が競い合って充実している中、Adobe Digital Editionsは今ひとつ垢抜けておらず、拡大縮小も一切できないなど読書環境としては貧相です。
フルスクリーン表示できますが焼け石に水で、与えられたものをそのまま読むだけのことに何ら変化はありません。
なお「Adobe Digital Editions」自体はPDF出力機能などを持っているようですが、著作権管理の観点からほとんどの機能がオフ(グレーアウト)になっています。
サイトナビゲーションがわかりづらい
「NetGalley」のWebサイトの作りがどうにも使いづらいです。
「NetGalley」では、現在のところ「ジャンル」ごとの一覧しか機能がありません。
「おすすめ作品」「リクエストの多い作品」などのくくりもありますが、結局は一覧から選んでいくしかありません。
出版社ごとに協力を仰いで行く形式でしょうから仕方ないのでしょうが、例えば関連作品、好みによるリコメンドなどがあってしかるべきだと思いますが、そういうナビゲーションは用意されていません。
作品名、出版社、ジャンル、作家名などをダイレクトに入力し、探し当てる必要があります。
きついことを言えば、そこまでわかっている書籍であれば、ゲラ刷りではなく正式に出版されたものを手にとって読んでみたいということになるでしょうから、どういう層がこの「NetGalley」を利用するのかという点がよくわかりませんでした。
雑感
現時点は特にユーザビリティの悪さが目につき、このままでは大きく幅広い層に広がるにはなかなかつらいのではないかと感じます。
レビューが承認制であり、また同時にレビュー対象の書籍も少なく、自分の興味を引く書籍に当たる確率も低くなってしまう傾向があるように感じます。
恐らく出版社としては、有用なレビュワーはネットなどではなく直接ファンレターを送るような層を重視しており、まだまだおっかなびっくりという状態なのでしょうが、このマッチングの悪さは悪評が多くなるリスクをはらんでいるのではないかと思います。
いずれにしろ始まったばかりのサービスであり、ゲラ刷り段階でレビューできるというのは読書好きの人にとっては何にも増して嬉しいサービスであることに違いありません。
今後の充実を期待したいところです。