イカの精莢(せいきょう)というものが非常に危険らしい。
事の発端はスプートニクニュース。
半生イカを口に入れ、韓国人女性の舌が受精 – Sputnik 日本
https://jp.sputniknews.com/incidents/201806084969684/ある63歳の女性が舌に強い痛みを感じて病院に駆け込んだ。医師が舌と歯茎を調べたところ、紡錘状の生体が12個見つかった。これを調べたところ、太平洋に棲息するイカの精子がカプセル状の入れ物に入った精莢(せいきょう)であることが判明した。
記事タイトルはともかく、何が起こっているのでしょうか。「精莢(せいきょう)」について調べてみました。
精莢(せいきょう)とは
イカの精莢(せいきょう)とは、「イカの精子がカプセル状の入れ物に入っているもの」だといいます。末に紹介している論文によれば、スルメイカの精莢の場合、次のような物であったということです。
直径約1mm,長さ4~5mmの乳自色でオタマジャクシやこん棒を思わせる形態であった.頭部を思わせる部分は硬く,体部・尾部を思わせる部分は弾力性があった
※同論文には精莢のほか、精莢が収められている精莢嚢などについても写真が掲載されています。
ネットで「精莢」を調べてみると、イカに限らず「精莢」で精子をメスに受け渡す仕組みをとっている生物があり、イカもその一種だそうです。
精莢 – Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B2%BE%E8%8E%A2精莢(せいきょう)とは、一部の動物のオスに見られる生殖器官で、精子を入れたカプセルとして切り離してメスに渡される。精子鞘とも呼ばれる。
運動能力を持ち、切り離されてからもしばらく生き続け、メスが受け取って持ち歩く例も見られる。
イカ等ではオスが自分の腕でメスの口唇部や受精嚢に植え付ける。運動するので、スルメイカではよく寄生虫と間違われる。人が食べて刺さってしまうこともある。
一般には生殖器を直接挿入しない動物が精子の入れ物として精莢を形成する。
本来はイカが交尾する際に、オスがメスの口唇部や受精嚢に植え付けることで受精するという仕組みになっているということです。
恐ろしいのは、この射出の仕組みが本体(イカ)が死んだ後も数時間程度は普通に動くことです。その上、恐ろしい速度で射出するため、これが刺さった場合激しい痛みを感じることがあり、そのため昔から「イカの精子は人を食べる」などと言われているようです。
射出の仕組み
ただしこの精莢(せいきょう)のみを取出しても射出動作はせず、一定の条件を与えることで射出動作が始まります。これを実際に検証した方がおられます。
アオリイカ精莢を観察する – たっき~の釣り日記
https://blog.goo.ne.jp/charaxy/e/3db95edaa50cbe8c3e68b03755c6f87eすぐは変化がみられなかったが、人の体温と同じ状況を作るため40度程のお湯にアルミの容器ごと浮かべてみたところ、一つ、また一つ発射されるように外へ飛び出してウネウネ気持ち悪いミサイルだ。
この方の実験では、単に舌に似たヌメッとしたものに置くだけでは反応せず、その後40度ほどのお湯に載せることで急に射出反応が起こったということです。
この射出動作をカメラに収めている人も居ました。
イカの精莢 – YouTube
こちらの動画では(温度などの環境に関係なく)ピンセットで刺激を与えることで射出を行わせています。
動画を見ると、10秒過ぎに膨張を始め、その後一気に射出されている様子がわかります。公開動画自体1/4のスローモーション動画なのですが、それでもあまりに早くてよくわかりません。Youtubeの再生速度を0.25に変えてみると一瞬で射出が終わっているのがわかります。
対策
どうすればいいのでしょうか?
本来はイカを捌く際に内臓はすべて取り除くため、スーパーなどで売られているイカでこの精莢に当たることはないようです。
危ないのは釣り人が釣り上げたものを持ち帰ったり、それをもらったりした場合で、内臓部分をしっかり取り除くことで避けることができるようです。よくわからない場合には、漁師さん(釣り上げた人)に捌いてもらったほうがいいでしょう。
生魚といえばアニサキス被害が知られていますが、こちらの精莢も結構危険なものだという認識を持っておきましょう。
参考
CiNii 論文 – スルメイカの精莢による口腔内刺傷の1例
https://ci.nii.ac.jp/naid/10027088910
※オレンジ色の「DOI」をクリック → 遷移先画面右上の「PDFをダウンロード」をクリック。
イカの精莢による苦情・相談事例
http://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/40916/1/No8.pdf ※リンク先消失