12月1日から4K/8K衛星放送が始まるというのに、すっかり冷え込んでいるということです。
新4K・8K放送、テレビ局もテレビメーカーも「やる気なし」のワケ(鈴木 祐司) | マネー現代 | 講談社(1/4)
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58574
「現代」の記事ですが、次世代メディア研究所所長メディアアナリスト、鈴木祐司というご立派な肩書を持つ人物が書いた記事らしいです。それにしてもまったく勘違い甚だしくて、呆れてしまいました。
新4K・8K放送とやらに魅力がないのは、大きく分ければ下記の3点に絞り込まれると思われます。
- 録画するメディアがない
- そもそも放送内容に魅力がない
- 2K(現行1080p)で十分
1.録画するメディアがない
そもそも現在の2K(現行1080p)放送でもBDレコーダーでギリギリなのに、それ以上の録画容量を必要とするメディアが必要となれば、保存せずHDD録画したものを消費するだけということになるでしょう。
もちろん著作権者から見ればこれがもっとも望ましい理想形となるのでしょうが、消費者が求める着地点とはまったくかけ離れているのは、録画機能付きTVがよく売れていることからもわかるでしょう。
もっとも録画する価値があるのかということで言えば、さらに必要性は落ちるのかも知れません。
2.そもそも放送内容に魅力がない
いわゆるひな壇芸人がスタジオでビデオを見てコメントするような番組を、高画質で見る必要性を感じない。これに尽きるのではないでしょうか。
あるいはマイクすら握らないパフォーマンス集団のあまり上手とも言えない歌唱ばかり流す歌番組や、素人(それでも前記パフォーマンス集団よりはるかに歌唱力が高い)のカラオケ番組や、芸人・素人をひっかけて笑う番組など、これで視聴者を満足させられると思っているとしたらお寒い限りです。
しかも4K/8Kが導入される衛星放送というのは、現在は地上波で出られなくなった芸能人のいわばニ部リーグ的な存在であって、上で書いた内容よりもさらに一段落ちるのが現実です。
一体いま現在放送されている番組で、現在の2K(現行1080p)放送では不足するというものがどれほどあるのでしょうか。一部のドキュメンタリー程度でしょうし、それなら最初から専門チャンネルを見たほうがよほどマシです。
3.2K(現行1080p)で十分
1や2とも被りますが、要するに視聴者の求めるものは2K画質で十分なのです。
インチ数があがれば高画質が欲しくなると言っても、日本の家庭がそれほど巨大なTVを必要とする場面は少なく、それ以前に放送内容に魅力がないのですから巨大なTVにをそろえる必要性が出てこないのです。
仕事で疲れて帰宅してリビングのTVを付けると、大画面に巨大なアナウンサー(キャスターというらしい)の顔が大写しになって、偏向報道ばかりを繰り返す。これのどこに4K画質が必要なのか、視聴者ははなはだ疑問なのではないでしょうか。
前掲記事では放送局側もやる気がないとのことですが、それももっともなことです。
4Kになったらさらに映像ソース制作のコストが跳ね上がり、その上広告収入が減っている現状ではそこにかけるコストすら捻出できない。4Kに上げたからと言って視聴率が上がるわけではないので、まったく無駄なコストだけが発生するわけです。
こんなすぐに誰でも書けるような内容が、なぜわからないのか。いやわかっているけどどうしようもないのでしょう。結局日本のテレビ業界はもうオールドメディアになりつつあるということなのです。
すでにhuluやNetflixなどの動画配信サービスが勢力を広げつつあり、番組制作力でもキー局を抜くのは時間の問題になりつつあるようです。かつて多くの人々を熱狂させたというラジオや映画が繁栄を謳歌しては廃れていったように、テレビ放送もまたそうした時代が来るのだということではないのでしょうか。