「わいせつ行為」と「みだらな行為」

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マスコミ報道ではたびたび隠語が用いられており、そのひとつに「わいせつ行為」や「みだらな行為」などがある。

しかし何が「わいせつ行為」で、何が「みだらな行為」なのかは、報道で触れられることはない。つまるところ、「わいせつ行為」と「みだらな行為」の大きな違いは性交渉があったかなかったかに尽きる。

以下で詳しく見ていく。

 

【disclaimer:免責事項】
・なお以下で述べるのはマスコミ報道における用語の読み解き方について個人的に調べた内容に過ぎず、法律アドバイスではありません。著者である私自身は弁護士でも司法書士でもありませんので、法的なアドバイスを求める場合には弁護士にご相談ください。

・以下で述べることは法的に何ら根拠となりえませんし、これをもとに抗弁した所で効果がないのは言うまでもないことです。
・あくまで日々のマスコミ報道における特殊な用語がどういう意味なんだろうという程度の疑問解決にのみ用いてください。

 

 

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目次

そもそも「わいせつ行為」や「みだらな行為」とは?

そもそも「わいせつ」や「みだら」自体には特別の意味はなく、その範囲は広いものがある。

たとえば「わいせつ」について小学館の「デジタル大辞泉」では次のように書かれている。

[名・形動]

1 みだらなこと。いやらしいこと。また、そのさま。「―な話」「―な記事」

2 法律で、いたずらに人の性欲を刺激し、正常な羞恥心(しゅうちしん)を害して、善良な性的道徳観念に反すること。「公然―」「―物」

結局その意味するところはよくわからない。”みだらなこと”や”いやらしいこと”といっても、その基準は人により様々で、古風で厳格な人に言わせれば2人きりで会話をしたり手をつないでも言語道断かも知れないし、現代風の通念で言えば手をつなぐこと(あるいは挨拶代わりのハグ)ぐらい当たり前になりつつあるし、いわゆるパリピな人にしてみれば軽いSEXくらいまではみだらじゃないかもしれない。

要するに、そもそもの言葉自体にはどこからどこまでという明確な基準はないのだ。また字義的には”わいせつ=みだらなこと”なんだから使い分ける必要もない。しかしマスコミ報道においては、「わいせつ行為」や「みだらな行為」として使われる際には明確な使い分けがされており、各社はある基準に照らして使い分けていることがわかる。

その基準はどこにあるんだろうと探るのが、本稿の趣旨となる。

 

「わいせつ行為」

「わいせつ行為」とは、身体への接触、キス、脱衣など、性欲を刺激する行為を指す。この場合、「性的暴行を加え」などと表現される場合もある。一般人の隠語で言えば「(Aを含み)Bまでやった」ということになる。

これらが強制的に、すなわち暴行や脅迫を用いて抵抗できない状態で行われた場合、刑法では次のように規定されている。いわゆる「痴漢行為」などもここに含まれる。

※以下条文ソースは「e-Gov法令検索」刑法 | e-Gov法令検索

(強制わいせつ)

第176条

13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

いくつか条件があり、準強制わいせつ罪、監護者わいせつ罪などに分類される。

(準強制わいせつ及び準強姦)

第178条
  1. 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第176条の例による。
  2. 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。

※177条は強制性交。後述

公然わいせつ

公然と人目に付く場所において、わいせつな行為やわいせつ物を露出することを指す。公然での性交渉もこれに含まれる。

(公然わいせつ)

第174条

公然とわいせつな行為をした者は、六月以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

 

ふしだらな行為

よく似た言葉で、「ふしだらな行為」というものがある。

その行為自体は問題がない(つまり双方同意の上)が、行われた場所や品位などに問題があった場合に用いられているようだ。

ちなみに小学館の「デジタル大辞泉」では次のように書かれている。

1 けじめがなく、だらしないこと。また、そのさま。「生活がふしだらになる」
2 品行が悪いこと。身持ちが悪いこと。また、そのさま。「ふしだらな関係になる」

 

「淫らな行為(みだらな行為)」

では「みだらな行為」とはなんだろうか。

「みだらな行為」とは、結婚を前提とした関係にない者同士の性交渉を意味する。要するに性行為、つまりはSEXがあったということ。一般人の隠語でいえば「Cまでやった」ということになる。

犯罪報道で、「みだらな行為」を行ったといった場合、これは性行為が行われたことを意味している。この性行為には、通常の性交、肛門性交(アナルセックス)、口腔性交(オーラルセックス)を含む。

この「みだらな行為」が強制的に、要するに合意なく行われた場合(いわゆる強姦)、刑法上は「強制性交等罪 」として規定されている。

(強制性交等)

第177条

十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

この強制性交等罪は、元々は女性のみが適用される「強姦罪」であったが、平成29年(2017年)の法改正により男性が被害者の場合でも適用されるようになったようだ。

 

「淫行」

なお「淫行」という言葉は、通常はこの「みだらな行為」と同じ意味で用いられている。ただし、用途としてはもう少し広く用いられ、自らの性器を触らせたなどの性交類似行為も含まれる。

小学館の「デジタル大辞泉」では次のように明快に書かれている。

みだらな‐こうい〔‐カウヰ〕【淫らな行為】
淫行の婉曲な言い方。特に、買春などによる青少年との性交や猥褻行為。

「婦女暴行」

これは「強姦」を婉曲表現したものである。結局は強制性交等罪が適用される。

ところで「暴行」とはなんだろうか。

小学館の「デジタル大辞泉」では次のように分けて書かれている。※3番目に下線追加

1 乱暴な行為。不正な行い。

「其―の寛厳は立君独裁の―に異ならずと雖も」〈福沢・文明論之概略〉

2 暴力を用いて人身に危害を加えること。「―を加える」「通行人に―する」

3 力ずくで女性を犯すこと。強姦 (ごうかん) 。

1番目と2番目は通常イメージする暴行だ。

暴行とは、法的には「人の身体に向けた有形力の行使をすること」などと説明され、要するに殴ったり蹴ったりのほか、判例では「毛髪を根元から切る」、「着衣を引っ張る」、「お清めと称して食塩をふりかける」、人に対して農薬を散布する、室内で日本刀を振り回すなどを暴行としている。こちらは刑法208条違反

一方3番目の婦女暴行はストレートに書かれており、要は強姦行為そのものを「婦女暴行」とやや婉曲に表現していることになる。しかし婦女だけに限らないというのはすでに刑法でも対応が行われており、Wikipediaでも「2010年代後半以降、この言葉は報道上では死語と化している。」と書かれている。じゃあどう言い換えるのかというと「性的暴行」になるが、性的暴行は婦女暴行(つまり強姦)よりも広い意味で用いられる用語であるため、今後は別の言葉に変わっていくものと思われる。

結論としては「婦女暴行」とはかつて強姦を指す婉曲表現として用いられたが現在はすでに用いられなくなりつつある表現ということになる。元々はマスコミが婉曲表現として用いた言葉であり、その意味では「容疑者(被疑者の言い換え)」と同種のマスコミ表現である。

 

 

実例でおさらい

いくつか実例を見ていきましょう。

とある日のニュースより個人情報を含まない内容で引用します。※なお犯罪ニュースは一定期間後に削除される運用となっており、引用元URLについてもそこから個人情報特定につながるおそれがあるため省略します。

実例1)準強制性交容疑

準強制性交の疑いで逮捕された*****は今年*月*日、交際相手の*0代の女性に対し自宅で睡眠導入剤入りの飲み物を飲ませ、性的暴行を加えた疑いがもたれています。

容疑者が性的な行為を要求してきたのに対し、女性は「体調が悪い」と拒否していましたが、その後、**容疑者が睡眠導入剤入りの*******を飲ませ、女性の意識がもうろうとしている間に犯行に及んだということです。

女性はその後、知人に付き添われて産婦人科を受診し、警察署に相談したことで被害が発覚しました。

個人情報保護のためにかなり伏せ字が入ってしまいますが、「性的暴行を加えた疑い」で「準強制性交の疑いで逮捕」と書かれてます。上で見た第178条違反ということになりますね。しかも性的暴行ですから、眠らせている間に(同意なく)致しちゃったということになります。当然犯罪行為(の疑い)です。

結構ストレートというか、「みだら」とか「わいせつ」などという婉曲表現を使わない書き方ですね。これは容疑者・被害者ともに成年であるためかも知れません。

実例2)「わいせつ行為」の場合

勤務する小学校の女子児童*人に対する強制わいせつの罪に問われた**県**市立小教諭の男(**)に対し、**地裁は*日、懲役3年(求刑・懲役6年)の実刑判決を言い渡した。1人への行為については無罪とした。

判決によると、男は****年6~7月と****年7月、当時勤務していた小学校で、女子児童2人の体を触るなどのわいせつな行為をした。

男は全面的に無罪を主張していたが、****裁判長は「児童の供述は一貫しており、不自然な点がない」と判断。「被害児童らの性的知識が未熟であることにつけ込む卑劣な犯行であり、実刑が相当」と結論づけた。

これは地裁判決の報道ですが、「わいせつ行為」が登場していますね。

被害者は小学生児童で、「女子児童2人の体を触るなどのわいせつな行為」としっかりと書かれています。この場合は同意なくお触りがあったということで当然ながら第176条違反(強制わいせつ)の犯罪行為(一審実刑判決)です。

実例3)「みだらな行為」の場合

**警察署は*日、**県の会社員・****容疑者(**)を強制性交と児童ポルノ禁止法違反の疑いで逮捕しました。

容疑者は*月、**県**市内のホテルで、当時小学生だった少女とみだらな行為をして、その様子をスマートフォンで撮影した疑いが持たれています。

警察によりますと、**容疑者と少女はインスタグラムで知り合い、**容疑者は現金を渡す約束をして少女を**市内のホテルに呼び出し、犯行に及んだということです。

出ました「みだらな行為」です。

実際には「強制性交」の疑いで逮捕されてますので、一般人隠語でいうところのCまでやったということになります。第177条違反(強制性交等)ということですね。

なおこの容疑者の場合には、未成年である少女の動画を撮影していますので、同時に「児童ポルノ禁止法違反」の疑いまで付いてしまっています。

 

 

 

 

関連)わいせつ物頒布等の罪

「わいせつ行為」に類似するものに、「わいせつ物頒布等の罪」がある。

要するにエッチなものを配ったり、みんなの目に入るようにしたりした人が罰せられるもので、刑法では次のように規定される。

(わいせつ物頒布等)

第175条

1 わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、2年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。
2 有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。

何が「わいせつ」か

そもそも何がエッチ、つまりは「わいせつ」なんだろうか。

これには明快な答えがないようだ。いろいろ調べても弁護士先生でも説明に困っている様子が見て取れる。

判例では「わいせつ三要件」というものがあり、次の3つが規定されている。

  1. 徒に性欲を刺激・興奮させること
  2. 普通人の正常な性的羞恥心を害すること
  3. 善良な性的道義観念に反すること

しかしこれでは、具体的に何がわいせつ物なのかはよくわからない。

一般的には、「陰部」(性器)、「臀部」(おしり)、「女性の胸部」がわいせつ物にあたるとされるが、一部の絵画ではこれをモロに描写・造形したものがある。しかしその場合には、芸術性が問題となっており、芸術作品であれば許されているケースが多いようだ。

 

※元々は1年くらい前?にメモ書きしておいたものですが、いつまでも寝かしておいても意味がないだろうと思い、一部加筆・修正して公開したものです。こうしたマスコミ独特の隠語ではなく正しい用語で報道する世の中になってほしいものです。

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