みなさんがご存知のおとぎ話「桃太郎」に登場するモモは、尖っています。
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2種類ある桃
たとえばNHKの「オトッペ」にある次の絵。
尖っていますね。
これに限らず、恐らくみなさんの記憶の中にある桃太郎が生まれてくる桃も同じように尖っていたはずです。
ついでに、桃のロゴで有名な中華レストランチェーン「バーミヤン」のロゴマークも見ておきましょう。こちらも尖ってますね。
次に、現在みなさんが食べている桃を思い浮かべてください。
いらすとやさんのイラストをお借りしましたが、尖ってないですね。皆さんが食べる桃も尖ってないはずです。リンゴと同様に、ヘタと尻の部分が凹んだ形状のはずです。
なぜこんな違いがあるのでしょうか。
天津水蜜桃
実は先の尖っている桃は、「天津水蜜桃」という系統です。
そもそも桃は中国原産の植物で、日本でも弥生時代の遺跡からも見つかっています。ただし現在の桃のように大きな果実ではなくまた甘くもないため、食用(フルーツ)というよりは主に祭祀用として用いられていたようです。江戸時代の「和漢三才図会」では「山城伏見、備前岡山、備後、紀州」が桃の産地としてあげられています。
その後、明治に入ってまもなく、日本には3系統の甘い桃が輸入されます。
明治8年(1875年)、勧業寮(現在の農林水産省・経済産業省)の特使が中国から移入した「天津水蜜桃」、「上海水蜜桃」、「蟠桃」という系統があり、このうち「天津水蜜桃」が尖っている品種ということになります。ただし、この「天津水蜜桃」は、甘みが「上海水蜜桃」に劣っていたため、日本ではそれほど注目されることもなく品種改良も行われなかったようです。
では現代の丸い桃(白桃)はというと、2番目の「上海水蜜桃」が該当します。甘みの強かった同種は各地で品種改良され、明治32年(1899年)優良品種の桃が、岡山県の小山益太・大久保重五郎の努力により開発され、完熟しても果皮が乳白色であったことから「白桃」と命名され、全国に急速に広まったようです。
創始者のものがたり|岡山市
桃太郎の桃は何なのか?
では桃太郎の尖った桃は何なのか?という疑問が残ります。
江戸時代末の桃太郎のお話が載った文献などを見てみると、桃の描写は少ないのですが、明らかに尖った描写がなされています。
ここからは想像ですが、古来日本にもあった桃は「天津水蜜桃」に近い品種であったのではないかと思われます。それを元に描写されたのがおとぎ話の「桃太郎」であったのではないかと想像できます。
バーミヤンの桃は?
中華料理では、「桃まん(桃饅頭)」という点心(スイーツ)があります。実際の桃ではなく、小麦粉で作ったもちもちした皮の中にあんこを詰めたものです。古来中国では桃は「仙果」とされ、不老長寿の薬効があるとされています。そのため、祝い事などでは「桃まん」が用意されます。
この「桃まん」は、先を尖らせて作るのが昔からの習いです。
バーミヤンの公式サイトでは尖っている桃が選ばれた理由は書かれていませんが、中華料理を提供するレストランとして、この「桃まん」をイメージしてロゴマークを決めたのではないかと思われます。